『Oの物語』ポーリーヌ・レアージュ

 
O嬢の物語 (河出文庫)   完訳Oの物語

 

 1954年にフランスで刊行された官能小説。原題は『Histoire d’O』。出版されるやいなや一大センセーションを巻き起こし、たちまちベストセラーとなった。1955年、ドゥ・マゴ賞(前衛的な新作に与えられる文学賞)を受賞した。
 露骨な性描写が政府に嫌がられ、1959年、出版者と著者が告発された。裁判の結果、出版自体は認められた。しかし、広告が禁止され、未成年者への販売が制限を受けた。
 著者名はポーリーヌ・レアージュ(Pauline Réage)だが、当時、誰もが「女性がこんな卑猥な小説を書くわけがない」と考え、序文を寄稿したジャン・ポーランが女性に仮託して執筆したという説が有力だった。
 しかし、1994年、批評家のドミニク・オーリー(Dominique Aury)が、自身の著作物であることを認め、真の作者論争に終止符が打たれた。
 ザ・ニューヨーカー誌に掲載されたインタビュー記事によると、雇用主兼恋人だったジャン・ポーランが「女性に性愛文学を書くことはできない」と発言したことに対し、女性でも創作可能であることを証明するために本書を執筆したとのこと。女性にモテモテだったポーランの気をひくことも、大きな目的のひとつだったらしい。
 なお、完結編である『ロワッシイへの帰還』(Retour a Roissy)は、ポーリーヌ・レアージュ名義で出版されているが、ドミニクは自作であることを明確に否定している。

 ストーリーはシンプルだ。
 ファッション・カメラマンのOが、恋人のルネによって城館へ連れて行かれ、そこで男たちにさまざまな調教を受ける。その後、Oはスティーヴン卿に譲り渡され、さらに過酷な性的訓練を強いられる。そして、恥部を剃毛されたOが、フクロウの仮面をつけて夜会に登場する。

 日本では多くの翻訳本が出版されているが、オススメは澁澤龍彦訳『O嬢の物語』と高遠弘美訳『完訳Oの物語』。
 もっとも普及しているのが澁澤訳で、私が最初に読んだのも角川文庫の澁澤訳だった。いまなら河出文庫版が入手しやすい。
 学研から出ている『完訳Oの物語』は、最終版を底本とした平易で正確な翻訳が魅力。完結編も掲載されているし、解説も詳細だ。しかし、現在絶版状態で、古書を探すしかない。
 個人的には千種忠夫が書いた『O嬢の物語』もオススメだが、こちらは翻訳というよりも翻案なので、好き嫌いが分かれるかもしれない。

 てっとりばやく知りたい人には映画がある。ジュスト・ジャカン監督による1975年の製作で、主演のコリンヌ・クレリーがO役にピッタリとはまっていて、なかなかの見応えだ。数種類のDVDが出ているが、ヘア解禁のリマスター版がオススメ。
 なお、続編の『O嬢の物語・第二章』とリメイク版の『新・O嬢の物語』は駄作なのでオススメしない。
 また、翻案モノとして、寺山修司監督・脚本の『上海異人娼館 チャイナ・ドール』がある。こちらは舞台を1920年代の上海に移した物語で、よくできているとは思うが、世界観がまったく異なっているので、寺山ファン向けの作品だと思う。

  

  

  

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