『好色一代男』井原西鶴


好色一代男 (中公文庫)

 

【あらすじ】
 遊び人の町人と京都島原の遊女との間に生まれたのが世之介。
 7歳という若さで性に目覚めて腰元に恋をし、11歳で京都伏見の遊里に出入りするようになり、15歳で後家との間に子供ができる。
 放蕩三昧が原因で19歳のときに勘当され、出家して僧侶になるがすぐに還俗。全国を渡り歩いて新たな性遍歴を重ねる。
 34歳のとき、父親の莫大な遺産2万5000両を相続して大々尽になり、35歳で吉野太夫と結婚するが、好色修行はとどまるところをしらず、日本各地の色町を巡って更に経験を積む。
 四十代になった世之介は、大尽としての粋を極めるべく、遊び場を三都(京都、江戸、大坂)に限定し、京都島原の三笠・初音・高橋・薫、江戸吉原の高雄・小柴・吉田、大坂新町の夕霧・吾妻・野秋といった超一流の大夫たちと交流を重ねる。
 そして最後は、好色丸に乗り込んで、女だけが住むという伝説の地“女護島”を目指して出航する。

 

 本書は、浮世草子の作者として有名な井原西鶴(1642-1693年)の処女作。1682年(天和二年)に大坂の池田屋と江戸の奈良屋から8巻本で出版された。
 時代を画す傑作と評価されており、本作以降に出版された同系統の作品群を『浮世草子』と呼んで『仮名草紙』と区別する。また、『好色本』(遊里などの好色生活を題材とする浮世草子)の開祖とも称される。
 本作の主人公は、世之介。戯れた女が3742人、弄んだ寵童が725人という男も女も大歓迎の好色男。『源氏物語』54帖にならって、7歳から60歳までの54年間がさまざまな漁色エピソード(基本的に1年で1話)で繋がれ、一篇の長編小説となっている。

 本書を読むと当時の性風俗がよく分かる。
 著者の井原西鶴は、自分が実際に見聞きしたことをエピソードに仕立て上げている。
 もちろん読み物だから、ある程度は話を盛っているが、本書に登場する遊女は実在した女性ばかりだし、遊里に関する描写も正確なのだ。
 だから、世之介は、粋な大坂大尽の集合体と考えてもよいと思う。

 本書の現代語訳でオススメなのは、中公文庫の吉行淳之介訳。芥川賞作家だけあって、原文を忠実に訳しているにもかかわらず、現代の読み物として普通に読むことができる。
 原文を堪能したいなら岩波文庫版が最適。当時の挿絵も多数収録されている。ただし、原文のみで注釈すらないので、本書1冊だけで内容を理解するのは難しい。
 対訳本には、新潮社の日本古典集成(48)や小学館の新編日本古典文学全集(66)などがある。

  

  

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