『闇への供物』千草忠夫


闇への供物1 (ベストセラーズ文庫)

【もくじ】
01 珠光寺の人身御供
02 往生柱背負い縛り
03 陰部に刺さる太針
04 密壺の肉の襞
05 魂消えるような悲鳴
06 地下室のすえた匂い
07 少女破瓜儀式
08 貝合わせ色さらし
09 錦城女学園女教師
10 狸吊り獄門責め
11 十文字女体拘束
12 性獣の熱い舌
13 鞭打ち皮叩き
14 飼育される幼な妻
15 疑似棒肉貝刺し
16 花くずし蕾責め
17 女虐図枕縁起
18 甘い汁苦い密
19 仕置場の白い肉置
20 母娘なぶり色地獄
21 甘噛みの紫の痣
22 錦城女学園の学園長
23 手首縄責竹吊り
25 直腸に剛直肉柱
25 果てしなき性の乱れ宴

 SM御三家(ほかは団鬼六と蘭光生)のひとりとして有名な千草忠夫の代表作が『闇への供物』。
 小説誌『小説S&Mスナイパー』で1980~1984年にかけて連載され、1984年にミリオン出版から単行本が出版された。
 しばらく絶版状態だったが、2013年、KKベストセラーズからベストセラーズ文庫(全5巻)として復刻された。

 初めて千草忠夫の作品を読んだのは大学1年生のときだった。4つ年上のクラスメイトに薦められて読んだのだが、その独特の世界に大いに魅了された記憶がある。
 千草忠夫は多作の人で、単行本だけでも200冊以上出版された。僕が読んだのはそのなかの半分程度だが、長編小説でいちばん好きなのが本書。
 千草忠夫は経歴に謎の多い人物なので断言することはできないが、1930年生まれが本当だとすると、五十代前半という小説家として最も脂がのっていたであろう時期に書かれた作品ということになる。
 ごく一般的なサイズの長編作品として構想されて連載が始まった小説がこんなに長い大長編作品に変貌したことが、その証左といえる。代表作として有名な『嬲獣シリーズ』(全8巻)も同時期に執筆されている。
 本作には千草忠夫のエッセンスがすべて詰まっている。気高い母娘がSM的に陵辱されて性奴隷に落ちていくというストーリーが千草作品には多いが、本書はその典型的な作品。それに加え、女子高生、女子大生、女教師、校長、人妻たちが野獣たちの供物となる。
 舞台が古都・金沢というのも千草文学の鉄板設定といえるだろう。作者は金沢の女子校教師だった(らしい)ので、本書でも女子校の裏事情が重要なアイテムとして利用されている。また、因習漂う古寺が物語のメインステージになっていて、主人公たちが地獄に落ちる原因も古刹の存在にあるのだが、その寺が仏壇地獄として有名な北陸の金沢にあることが、ストーリーに説得力を与えている。
 主人公は、お寺の後家とその娘。美しい後家は、寺の下男、檀家の有力者、地元のフィクサーなどの慰み者になる。高校生の娘は寺存続のために政略結婚させられる。そして最後には母娘が一緒に陵辱される。
 「かんにんして」と「くくらないで」が、千草文学の神髄だと僕は思っているのだが、本作でもさまざまな場面でこのフレーズが登場する。女性たちにこれらの言葉を吐かせるための装置がたくさん用意されているのだが、それがいかにも千草忠夫らしくて好感が持てる。
 同じ「くくらないで」でも、主人公が懇願する状況が、団鬼六や蘭光生とはずいぶん異り、その叙情豊かで甘い嘆美的な雰囲気が、読者を独特の千草ワールドへいざなう。SMとしてぬるいという批判もあるが、その緩さゆえに官能小説として独自のポジションを築いているのだと思う。