痴漢通勤電車(1)

 ある晴れた春の日。ここ数年の異常気象の常で、その日も早朝から夏のように蒸し暑かった。
 有香{ゆか}はいつもの通勤電車に乗りこんだ。普段は先頭の女性専用車両に乗るのだが、この日は支度に手間取って乗り遅れそうになり、エレベーター前の車輌に慌てて飛び乗った。
 都心の終着駅まで1時間余りかかる通勤特急列車の扉が閉まった。車内は冷房が効いているが、あまりの人の多さに蒸し蒸しする。さまざまな男の体臭が入り交じった嫌な臭いが気になってしかたがない。女性専用車両とは大違いだ。
 有香は扉の脇にスペースを見つけて立った。そこには座席がなかった。混雑時に座席が畳まれるところだった。さわやかな陽が差し込む窓際に立ち、走馬燈のように流れゆく景色を眺めた。ハンドバックの中には読みかけの文庫本が入っていたが、それを取り出すことができないほど車内は混雑していた。

 今日の仕事の段取りを考えはじめたとき、臀部に固い棒のようなものが当たるのを感じた。しばらくしてまた当たった。
振り向いて確認すると、そこには男の手があった。電車の振動で腕が当たったようだ。
 正面を向くとすぐに男の手がまた有香の臀部に触れた。今度は手の甲で何度も強く押された。手の甲が円を描くように有香の柔らかなふたつの丘を這いまわるたびに薄紅色のフレアースカートが揺れた。
 有香は“痴漢に違いな”いと思った。偶然触れたにしては手の動きが不自然すぎる。しかし、声を上げる勇気はなかったので、別の場所へ移動することにした。非常に消極的な手段だが、内気な有香にとってはこれが最良と思える方法だった。

 そのとき、車窓が突然消えた。男が割り込んできて、有香と窓ガラスの間に立ったのだ。有香にはスーツの背中しか見えない。
 男が振り返った。背が高い。上を見て顔を確認したくても、男の顎で頭頂を押さえつけられ、顔を上げることができない。
 目を開いてもライトブルーのワイシャツと深紅の幅広ネクタイしか見えない。男が体を密着させたため、抱えていたハンドバッグが強く押され、みぞおちの辺りが痛い。
 有香はカニ歩きしてドアのほうに逃げようとした。しかし、左隣の男が障害になって移動することができない。肩で何度も押すがびくともしない。
 しかたなく右へ移動しようとした。しかし、右隣の男も頑として動かない。それどころか、こちらを向き腰を脇腹に押しつけてきた。
 有香は痴漢たちに四方を囲まれてしまった。

 背後では、手の甲が手の平に変わっていた。
 有香の双丘が十本の指で強く揉まれる。まるでエステでマッサージを受けているように。次に、手の平で撫でまわされた。左の手の平が左臀部を、右の手の平が右臀部を、弧を描くようにして優しく刺激する。
 有香は暑くてガードルを着けて来なかったことを後悔した。男の手と自分の肌の間にはスカートとショーツという薄い2枚の布しかない。そのため、直接触られているのとたいして違いがないように感じられた。
 後ろの男の右手が、有香の股間に滑り込んだ。内股がゆっくりと撫でられる。男の硬いゴツゴツした手の平が有香の柔肌を直接刺激する。暑かったためパンストは身につけていない。会社で履こうと思いハンドバッグの中にある。有香はまた後悔した。

 ガタンゴトン、ガタンゴトン。線路の境目をまたぐたびに通勤電車は揺れる。
 その振動に合わせて小柄な有香の体も揺れるが、前後左右を見知らぬ男たちにとり囲まれているため、数センチすら移動することができない。
 有香は大声をあげて助けを求めようと考えた。しかし、その声が出ない。後ろの男はあいかわらず有香の太股を弄んでいる。
 これは明らかに痴漢行為だ。腕を掴んで車内の人たちに見せれば、この男は間違いなく逮捕されるはずだ。しかし、両手はハンドバッグを抱えたまま動かない。全身がまるで金縛りにあったように硬直していた。
 後ろの男の右手がショーツに触れ、クロッチの上を撫でまわす。左手は恥毛の上を刷毛でなぞるように軽やかに摩る。
 前後から攻められ、有香は下腹部が熱くなるのを感じた。

 後ろの男の左手が前からショーツの中に滑り込んできた。産毛のような柔らかな恥毛が優しく撫でられる。中指が陰核を発見した。包皮の上から指の腹で押され擦られる。充血して膨らむのがわかった。
 右手がクロッチの脇から侵入する。4本の指で小陰唇全体が撫でまわされる。有香の子宮がキュンと伸縮した。

 大切な部分を男性に触られるのは久しぶりだった。
 ひとりの男にしか触らせたことのない秘部は、月に一度程度の自慰のときにしか快感を与えられない。そのため、ちょっと撫でられただけでも大きな刺激を受けてしまう。
 恋人だった男が有香の股間に手を伸ばすときは、濡れているかどうか確認するときだけだった。濡れていればすぐに剛直を挿入し、濡れがじゅうぶんでなければ膣口を指で撫でて愛液の分泌を促した。陰核に触ることはほとんどなかった。
 しかし、痴漢は陰核を執拗に愛撫した。自分でするときよりも何倍も気持ちがいい。有香は感じていた。閉じていた両足はいつの間にか肩幅まで開き、男の両の手が動きやすいようフォローさえしていた。
 後ろの男は、左手で包皮を剝き、右手の中指で肉芽を直接愛した。充血して豆粒大に成長した肉粒が擦られるたびに、有香の下腹部を快感が覆った。